耐震等級3は建物の揺れを増幅させる共振現象に耐える?
こちらの記事では耐震と制震について紹介しており、記事内でも共振現象について触れていますが、改めてご紹介したいと思います。
「地震の揺れ」と「建物の揺れ」が重なるとさらに建物が揺れる
共振現象とは、建物の揺れ方と地震の揺れ方が一致すればするほど、建物の揺れが増幅する現象です。
参照記事:「地盤が硬ければ安心」ではない? 熊本地震にみる地盤と建物倒壊の関係
こちらの動画は、2016年に発生した熊本地震において、なぜ川に近い軟弱地盤ではなく“やや硬い地盤での被害が大きかったのか”を模型を使って説明されています。動画の中でも説明されていますが、地盤の揺れの周期と建物の揺れの周期が合うことで、建物の揺れが大きくなる共振現象が大きな要因です。
なお、揺れ方のことを固有周期と言い、揺れが往復する時間を指します。一般的な住宅では0.1〜0.5秒と言われ、近年の耐震性を考慮された住宅はおよそ0.1〜0.3秒、少し古い住宅だと0.3〜0.5秒と言われています。
耐震等級3であれば大丈夫なのか?
2016年に発生した熊本地震では、等級1の建物が倒れずに等級2の建物が倒壊した事例がありました。一部接合部不良が報告されていますが、建物の壁や柱などが重なる割合である“直下率”が悪かった要因と、先程の共振現象が重なったことで発生したものです。
そして、耐震等級3の住宅においては小破・軽微はあっても中破以上の損害は0だったことから、等級3の耐震性能であれば共振現象の被害も抑えることができると言えます。
【出典】熊本地震を教訓に−耐震等級3のススメ
ただ、1つ懸念するポイントは、万が一連続して発生する大きな地震により、等級3の耐震性能が落ちてしまった場合です。耐震性能が落ちてしまうと建物の固有周期が長くなり、被害が大きくなると言われる固有周期1〜2秒の地震で大きな被害が出ることがが予想されます。
制震ダンパーを採用した場合のメリットは、揺れを吸収し耐震性能を低下させるほどの変形を防ぐこと、そして共振現象による揺れの増幅も抑えることです。等級3でしっかり設計すれば大丈夫だと思いますが、絶対はないと想定して対策するのが無難です。
実際に熊本地震では震度6以上が3日以内に7回発生し、そのうち2回は震度7という今まで誰も想像しなかった頻度で大きな地震が繰り返されました。等級3の住宅のほとんどが無被害ではありましたが、今後それ以上の地震がこないとは誰も言い切れません。
今できる限りの地震対策を考えるなら、制震ダンパーを採用し揺れを軽減させるか、モノコック構造にしてさらに頑丈にするかのどちらかの対策を講じておくのが理想です。
制震ダンパーとモノコック構造、どちらがいい?
写真は、“飛行機などにも採用されているモノコック構造”にできるコーチパネル工法での写真です。柱と柱の間に強度のあるパネルを埋め込んでいきます。柱の中から揺れを支えるため耐震性能が飛躍的に伸び、通常の耐震等級3よりもさらに頑丈になります。
モノコック構造になると、耐震性がより向上し共振現象等の影響もかなり抑えられます。総合的に見て、現状の工法の中でも耐震性能がかなり高い方です。制震ダンパーに比べるとコストが少し高いですが、耐震性に加え断熱性能と気密性能も高くなる工法ですので、費用対効果で見ればとても優秀な工法になります。
パネル工法と制震ダンパーは、住宅の損傷を防止するためのアプローチの方法が違います。そのため単純な比較が難しいのですが、耐震性能の視点だけを見れば、制震ダンパーを採用する方がコストパフォーマンスとしてもオススメではあります。興味がございましたらぜひ一度ご相談くださいね。