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なぜ、断熱性能が上がっていくと効果が薄くなるのか? |家づくりコラム|ライトパス

なぜ、断熱性能が上がっていくと効果が薄くなるのか?

断熱性能の費用対効果

 

住宅の性能で1番認知度が高いのが“断熱性能=UA値”です。断熱性能とは家全体の平均的な熱の通りにくさを表し、UA値の数字が小さいほど熱を通しにくくなり、夏は涼しく冬は温かい家になります。

断熱性能が高ければ外気の影響を受けにくく冷暖房効果が上がりますが、言い換えると外気の影響を受けるスピードと冷暖房のスピード勝負です。

冷暖房と外気のスピード勝負

基本的には、断熱性能が高ければ冷暖房無しで暮らせるというわけではなく、あくまで少ないエネルギーで冷暖房を行えるということになります。そして、一定の水準の断熱性能があれば、それ以上の性能値の体感は小さくなるというのが今回のお話です。

 


−目次−
断熱性能が一定水準以上なら、体感はほとんど変わらない
なぜ、UA値0.6以上の高性能では体感の差がないのか?
湖北エリアである長浜市や高島市はUA値0.5以下を推奨



 

断熱性能が一定水準以上なら、体感はほとんど変わらない

UA値による体感

こちらは、2020年に行われたZEH支援事業調査発表会の資料です。滋賀県と同じ地域区分6のアンケートで、「冷暖房設備の効きが悪いと感じた」に対する“断熱性能”毎による回答の違いを見てみるとほとんど差がないことが分かります。冬の回答では断熱性能により少し差がでていますが、大きな差ではありません。

断熱性能が1番低いUA値0.6[w/㎡・k]であってもほとんどの方が気にせず暮らせているということは、それ以上の高性能では体感しにくいということになります。実際にいくつかの住宅で冷暖房効果を体感してみると、確かにアンケート結果のように差を感じにくいです。

「でも、電気代が安くなるんじゃないの?」

家づくりコラムを執筆している広報担当の私も、最初はそう思いました。そこで、実際の電気代を比較してみると、

断熱性能(UA値)と電気代の変化

このように、断熱断熱が上がっていくことで性能は上がりますが、電気代で安くなった1,500円分よりも住宅ローンの支出が+10,000円と大きく跳ね上がります(一般的な住宅ローンの金利0.625%と想定し、UA値を0.6→0.28にするのに400万円アップしたと過程した場合)

※住宅ローンのオレンジのグラフは、電気代のグラフ差“1500円=1マス”を基準にし、それを10,000円分並べています。住宅ローンの支出の大きさを目立たせるためではなく、電気代−1,500円分の縦幅を基準にするとこのようなグラフになります

では、住宅ローンの支出を+1,500円で±0にしようと考えた場合、総予算+57万円に抑えられるのであれば電気代を相殺可能ですが、57万円の予算ではUA値0.5が限界です。ですが、UA値が0.6→0.5になった場合、安くなる電気代は500円前後になってしまいます。

 

なぜ、UA値0.6以上の高性能では体感の差がないのか?

ここで冒頭にお伝えした、断熱性能は外気温の影響を受けるスピードと冷暖房のスピード勝負ということをもう一度振り返ります。

冷暖房と外気のスピード勝負

断熱性能が高ければは外気温の影響を受けるスピードを遅くすることができるので、冷暖房のスピードの方が速くなります。その冷暖房のスピードに余裕が生まれてくるターニングポイントがUA値0.6という断熱性能であるため、それ以上の性能は差を感じにくくなります。

もちろん、断熱性能が高くなればそれだけ省エネルギーで冷暖房を行えますが、先程の電気代の変化を見てもらったら分かるように、UA値0.6→0.28でも1.500円ほどしか変わりません。

これは、冷暖房器具の性能が高くなってきたことも影響しているかと思いますが、冷暖房費は年間電気代の30%前後に過ぎないというのも大きな要因かと思います。元々30%しかない電気代を仮に半分にできたとしても、全体の15%しか減らせません。

“断熱性能が高いと電気代がお得になる”というフレーズをよく耳にしますが、近年の高性能住宅においては逆に年間の総支出が5〜10万円も上がるという現象が起きるため、電気代や支出を気にされる場合は、

  • 断熱性能
  • 電気代
  • 住宅ローンの月々の支払い

 
この3つのバランスによる総支出をしっかり把握しておくことが大事です。

 

湖北エリアである長浜市や高島市はUA値0.5以下を推奨

滋賀県は、彦根市辺りを境目にそれより北と南で気温や積雪状況が変わります。積雪に関しては彦根市の南に位置する東近江市でも数年に1度はドカッと雪が積もりますが、気温に関しては北に行けば行くほど寒いです。

そのため、湖北エリアではできればUA値0.5を切るぐらいが理想になります。ライトパスの標準仕様(24時間熱交換換気“澄家”採用)でも実測ベースでUA値0.47ぐらいになりますが、私自身が湖北で建てるとしたら窓の仕様をオール樹脂に性能アップさせてUA値0.43ぐらいにしたいですね。

また、湖北は言うまでもなく寒いですが、湖東や湖西でも山付近は寒いところがあるので、住むエリアの冬季気温は事前に確認して住宅の性能を決められるのが理想ですね。

 


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