気密性を高める3つの方法とメリット・デメリット
コーチパネル工法とは、柱と柱の間にパネルを埋め込み、家全体をモノコック構造にすることで耐震性を飛躍的に向上させる工法です。熱伝導率が高いネオマフォームを埋め込むことで断熱性能も高まり、気密性も上がるのが特徴です。そんなコーチパネル工法の住宅で、先日気密測定を行いました。
今回の測定の結果はC=0.4c㎡/㎡という値に。住宅業界では一般的にC=1c㎡/㎡以下で高気密と言われますが、十分な数値かと思います。
気密性とは、言い換えると家の隙間がどれだけ少ないか?という指標です。隙間が少なければ、それだけ外気が直接入ってこず、換気システムをきちんと通ることでしっかり計画換気を行えます。
現代の日本は24時間換気が建築基準法で義務付けされていますが、とくに熱交換ができる1種換気で“排出される室温の温度・湿度を再利用し室内に取り込む”際は気密性は高いほど効果が高くなります。
一般的な3種換気の場合は、外気が直接入り、室内の空気が直接外へ排出されるのであまり影響がないようにも思いますが、隙間が多いと上手く換気できず空気が滞留する可能性があります。単純に隙間が増えると冷暖房効果も少し落ちてしまいますね。
※出典:澄家DC 第1種換気方式
ちなみに、C=1.0c㎡/㎡は、単位の通り1㎡の中に1c㎡の隙間があるということ。割合で考えると、家の壁・天井・床の総面積に対して0.01%の隙間があるという意味になります。今回測定したC=0.4c㎡/㎡であれば、0.004%の隙間があるということになりますね。
家の構造上、目には見えない僅かな隙間が発生します。その隙間を最小限に留める努力をし丁寧に施工しないと、C=1.0c㎡/㎡を下回ることが難しいのですが、注文住宅でも気密性は企業によってバラバラです。気密性は実際に測定をしないと分かりませんが、現場で測定しないことの方が多く、改善される機会自体が少ないためです。
気密性が良いと何がいいの?
少し極端な例ではありますが、いくら断熱性能が高くても窓を全開にしておけば冬は寒く夏は暑いです。断熱性能=UA値は、あくまで隙間がないことを前提として各材料の性能値を家全体で平均化した値に過ぎません。
つまり、断熱性能が高いけど気密性が低い家よりも、断熱性能はそこそこで気密性が高い家の方が実際は快適に過ごせるケースもあるということです。もちろん程度にもよりますが、気密性は高いに越したことはありません。
ただ、気密性を徹底して上げようとするとコストも手間もかかり家の予算も上がってきます。ライトパスでは、低コストで手間がかからない方法でありながら気密性をC=1.0c㎡/㎡以下に向上させる施工を行うことで、なるべくお客さまの予算に影響がないように努めています(間取りやプラン内容によって気密性は変動します)。
気密性を上げるポイント
お客さまのプランで気密性に関わってくるのは、
- 窓のメーカーと種類
- 断熱材の種類
- 床の気密性の取り方
大きくこの3つです。
気密性に影響する仕様①:窓の種類
写真のように、横にスライドして開ける窓を引違い窓と言います。これとは別に押して開ける、またはハンドル操作で開ける窓を「縦すべり出し窓・横すべり出し窓」と言います。
※出典:YKK ラインナップ|エピソードNEO Ⅱ
そして、開閉機能がない窓のことをFIX窓と言い、主にこの3つが住宅の窓として使われます。この3つを、隙間が少ない順に並べると、
- FIX窓
- すべりだし窓
- 引違い窓
となり、FIX窓が1番隙間が無く、逆に引違い窓は1番隙間が多くなります。とは言え、一般的な引違い窓を部屋に1〜2つ配置したとしても、大きな影響はありません。
ただ、大きな引違い窓をたくさん配置した場合は、じわじわと影響してきます。また、ジャロジー(ルーバー窓)と言われる、ガラスの板を複数枚使った窓は気密性を大きく落とすため最近はほとんど使われません。
また、メーカーによっても気密性が若干変わります。カタログやメーカーHPには数値として出てくることはありませんが、値段やメーカーによって目には見えない部分で差が出てきます。
気密性に影響する仕様②:断熱材の種類
断熱材で1番ポピュラーななものはグラスウールというものですが、これはガラス繊維を袋に詰めたものになります。最近では袋に入っていないものもありますが、グラスウールは手作業で壁に充填していくためどうしても隙間ができやすく、気密性を高くしにくいです。
そこでライトパスでは、写真のような吹付け硬質ウレタンフォーム(以下、吹付け断熱)を標準仕様としてご提案しています。吹付け断熱は壁に吹き付けてから発泡するため、柱と壁に隙間なく密着します。
他には、冒頭でご紹介しました耐震性、断熱性、気密性といった3大住宅性能を上げられるコーチパネル工法も推奨していますが、コーチパネル工法もパネルにしっかりと断熱材が埋まり、気密テープも用いることで高い気密性を維持できます。
どちらの工法も気密測定を行いC=0.45前後の結果が出ているため、吹付け断熱とパネル工法では高い気密性を得ることができるのを確認しています。
そんな中でもグラスウールが1番普及している理由は、低コストで施工できるからです。吹付け断熱やパネル工法はグラスウールに比べて少しコストが上がるため、値段をウリにされている場合はグラスウールが標準仕様のケースが多いです。ですが、吹付け断熱であれば大きなコストアップにはならないため、ライトパスでは標準仕様としてご提案しています。
気密性の影響を与える仕様③:床の気密性の取り方
気密性で見落とされやすいのが床の気密をどうするかです。吹付け断熱を採用しても、床の気密が未対応であれば床の隙間から室内に空気が入ってきます。通常、床の土台と断熱材の隙間全てに気密テープを貼ることで気密性を確保しますが、普段対応されてない場合は施主側から希望を伝えないと未対応のまま進むため、一度確認されるのがオススメです。
ライトパスでは“澄家”といった床下で循環させる24時間熱交換換気システムを採用しており、澄家を採用した場合は基礎断熱を行います。基礎のコンクリートと土台になる木材との間に気密パッキンを使い、壁内の断熱材にも使う吹付けウレタンフォームで内側から覆うことで基礎内部に外気が入らない構造にするため、床に気密テープを貼る必要が無くなります。
床下に換気システムを導入すると床下の温度も一定に保て断熱性能も大きく上がるため、一石二鳥ですね。
気密性が高くなることのデメリットは予算アップ
ここまで気密性についてご紹介してきましたが、気密性を高めることのデメリットはとくにないかと思います。家の無駄な隙間が限りなく少なくなることで、冷暖房効果も上がり建築基準法で義務付けられた計画換気もスムーズに行われます。
ただ、強いて言えば気密性が高いことを売りの1つにされているプラン・企業は、どこも値段が少し高めでです。気密性を上げるには、丁寧かつ手間をかけて施工を行うことが必要になるため、どうしても高めになりやすいです。
ライトパスでは、気密性を高めながらもなるべくお客さまの負担にならないような工法を目指しておりますので、気密性に興味がございましたら気軽にご相談いただければ幸いです。