“高気密・高断熱住宅は乾燥する”は間違いでむしろ乾燥しない
冬は乾燥するとよく言われますが、外の空気だけでなく家の中の空気も乾燥します。そして、近年は“高気密高断熱住宅だと乾燥する”と言われるようになりました。しかし、これは間違いであり本当は“逆に高気密高断熱住宅は乾燥しない”が正しいです。
昔は石油系のストーブ・ファンヒーターで暖房と加湿ができた
石油式のストーブやファンヒーターは、原料である灯油を燃焼させることで空気を温めます。この時、灯油が燃焼することで水と二酸化炭素に分解されるため、石油ファンヒーターでも空気の加温+加湿することができます。ストーブの場合は上にヤカンを置くことでさらに加湿することも可能です。
石油系の暖房器具は、現在でもとくに寒冷地ではよく使われます。ストーブは電気が無くても使用できることから、災害に備えて1台所有されているケースもありますね。
石油式暖房器具の使用率が低くなりエアコンでの暖房が主流に
現在でも石油式の暖房器具を使われるケースはありますが、近年はエアコンの性能が高くなったことで積雪の少ない地方ではエアコンが主流となっていきました。
しかし、エアコンは石油式のストーブやファンヒーターと違い加湿はしません。最近は加湿もできるエアコンも登場していますが、まだ加湿できないエアコンが一般的です。そのため、加湿せずに室温だけ上げることで空気中の水蒸気の割合は下がっていきます。
空気中に含むことができる水分量は温度によって違います。エアコンで空気だけ温めると、水分量が変わらないため水分を含む割合が低くなる=湿度が下がるという仕組みです。
この仕組みにより、高気密高断熱の住宅は乾燥すると言われるようになりました。
高気密高断熱の住宅は、むしろ乾燥しにくい
エアコンは乾燥する、というのは間違いですが加湿しないので湿度は上がりません。そのため、エアコンを暖房器具として使う場合は別の手段で加湿する必要があり、一般的に加湿器が使われるようになりました。
しかし、気密性が低い場合は隙間から乾燥した外気が入ってくるため、部屋の中が乾燥しやすくなります。一方、気密性が高い住宅であれば無駄な隙間が最小限に抑えられ、加湿した空気を保ちやすくなります。
高気密高断熱住宅の方が空気が乾燥するという話は、残念ながら住宅業界でも未だに信じている人がいます。しかし、湿度の原理と住宅の空気の流れを知っていれば、むしろ乾燥しにくいことが分かるはずです。
近年は、部屋の湿度を検知し一定の湿度を保つような加湿器も安価で販売されているので、冬場は湿度コントロールができる加湿器を使のがオススメですね。
ちなみに、高断熱かどうかは空気の乾燥自体に影響はありません。夏であれば外気の暑さ、冬であれば外気の寒さの影響スピードをどれだけ遅くできるかというのが断熱だからです。もちろん高断熱に越したことはないですが、“冬場の乾燥を防ぐのは気密性”と覚えておきましょう。